こんにちは。「東京喰種」というアニメを観たので今回はそのレビューを書いていきます。
この「東京喰種」という作品には、人間ではない喰種という生き物が出てきます。この喰種は一見人間のように見えますが、彼らの食の対象は“人間”。その他の食べ物は美味しく感じられません。なので彼らは生きるために人間を殺し続けるのです。
この喰種が存在する東京で、人間にはいつも喰種に襲われる危険がつきまとっているので、自然に人間と喰種が敵対するようになります。この「東京喰種」という作品の最大の見どころは、まさにこの人間vs喰種の構図そのものといえるでしょう。喰種にとって人間を殺すこと=生きること。しかしもちろん人間側はこれを理解できません。人間側はCCG(喰種対策局)を中心として、喰種を一匹残らず駆逐しようとします。
その結果、特定の喰種が殺され、それが他の喰種の反感を買い、CCGの人間が喰種に殺されるという負のサイクルを起こします。喰種に対して植え付けた憎悪が巡り巡った結果、人間を殺してしまうのがこの作品が持つ、独特の面白いポイントだと感じました。
喰種にしてみれば、人間だって動物を殺して食べているじゃないかと思うでしょう。それと同様に作中では、人間を殺して食べて何が悪い?生きたいと思って何が悪い?というセリフが出てきます。それがもし正しい理だとしても、人間たちはそれを認めることはできない。だからCCGという組織を作り、喰種と戦うことを決断する…。
その行動自体はわかるのですが、人間は正義であり、喰種は悪であるというCCGの理念が喰種の憎悪を増長させてしまいます。人間こそが正しく、喰種は間違っているという考えが喰種側はどうしても理解できません。喰種を認めてしまえばCCGは根本から崩壊するため、絶対に悪だと決めつけなければなりません。
しかし視聴していると、それはとても自分本位でわがままな言い分に聞こえるのです。そのわがままな言い分を喰種たちに強いた結果、生まれたものは多くの人間の犠牲でした。己の正しさを表現する際によく使われる正義と悪という言葉。しかしそれは相手側の機嫌を損ねるだけで、最終的には自分の首をしめるような馬鹿馬鹿しいものです。どちらが正義かなど決めずとも平等に扱っていれば結果は変わっていたし、それは私が生きる現実の世界でも同じではないか?と感じました。
自分が恐れる対象に対して、誹謗中傷をしたりする場面を私は目にしてきたし、実際自分自身もしてきたと思います。でもその行為は、ただ相手を焚きつけるだけのものではないのか?と感じました。それをすることで、どんな利点があるのかを真剣に考えなければならないと思います。
私は、この「東京喰種」という作品を観たことで正義と悪について以前よりよく考えるようになり、善悪というものはその場の人間たちの都合のいいように決められているのでは?と思うようになりました。
東京喰種の中で描かれているように、人間は正義だが、人間にとって都合が悪い喰種は悪であるという考え方のようなものは、恐らく現実にも存在していると思うのです。実際に、邪魔で目障りな者たちを悪と決めつけて攻撃することはあります。けれどそれをしている人たちは、同様に他の人から見て邪魔な対象とはなっていないでしょうか?その答えはきっと「いいえ」でしょう。
人間という生き物は、己が善だと思って疑わない節があるのではないかと考えました。自分は悪いことなどしていないと思いたいがために他人を傷つけ、自分を守る行動を無意識下の内にしてしまう…。これまでは私も同じように善であることを前提として生活をしてきましたが、この「東京喰種」という作品に出会ってからは考え方が変わって、自分は悪になるときもあるのでは?と思い始めました。
そして、もし他人が自分の迷惑な存在であったとしても、なるべくそれはあおいこなのだと考えるようになったのです。この作品にふれることで、前よりも心に余裕をもって生活できるようになったのは良い変化でした。
この「東京喰種」という作品に喰種という存在は数多く出てきます。それは主人公も例外ではないので、どうしても喰種側の見方で物事を考えてしまいます。そしてCCGはというと、喰種たちを排除しようとするので悪役に思えてくるのです。
人を殺す恐ろしい対象である喰種ですが、あまりマイナスな印象は生まれません。このアニメが人を惹きつけるのは、この設定にあると私は考えました。もしこの作品がCCGを中心にして作られていたとしたら、人を殺して食べる喰種は完全な悪で、排除されて当然だと思っていたでしょう。
しかし喰種は主役で、その上で喰種たちの関わりなどが繊細に描かれているので、それを知って観るとやはりCCGには嫌悪感を抱いてしまいます。悪者を倒して終わりという単純な構図ではなく、正義とは?悪とは?と、観る者に問いかけてくるアニメで、奥がとても深いです。なので、単純な正義のヒーローものに飽きた人や一風変わった主人公のアニメが観たい人におすすめできる作品だと思います。